• YOMIURI ONLIN

医療通訳 体制整わず、外国人の受診急増

外国人旅行者や居住者が増えているのに伴い、医療機関を受診するケースも急増している。時に生死にかかわるだけに微妙なニュアンスも正確に伝えたいが、難題なのが言葉の壁だ。その橋渡し役が「医療通訳」で、九州・沖縄・山口では数少ないボランティアにかろうじて支えられている。

イスラム教徒の出産

 「大学院で学ぶ留学生は年齢的に出産時期に重なることが多い。女性にとって出産は人生の一大イベントで、できる限り支えたい」。こう語るのは山口大(山口市)の留学生を支援する「国際交流ひらかわの風の会」事務局長、斎藤凉子さん(68)だ。「日常会話程度」と謙遜する英語で、外国人女性の出産を10件以上サポートしてきた。

 きっかけは2012年、知人のインドネシア人留学生の妻の出産に付き添ったこと。夫妻はイスラム教徒で、男性医師が出産に立ち会うことは宗教上の禁忌だ。斎藤さんは女性医師がいる病院を探し出し、妻と医療スタッフとの間で通訳したり、やはり禁忌の豚由来成分が入っていない粉ミルクを探したりと、奔走した。

能力まちまち

 医療通訳は国家資格ではなく、斎藤さんのように大半はボランティアだ。派遣は有償の場合が多いが、自治体の外郭団体や各地の民間団体が独自基準で認定・登録しているので、語学力や医療行為に関する知識もさまざま。人数も正確には分からない。厚生労働省が医療通訳養成のために公開したテキストに準拠し、一般財団法人「日本医療教育財団」(東京)が昨年、医療通訳技能認定試験(英語・中国語)を始めたばかりだ。

 山口県内では、県国際交流協会が約150人を一般的な通訳ボランティアとして登録し、語学力が高い一部の人を医療機関に紹介しているが、紹介実績は年間数件しかないという。医療通訳は本業がある人が多く、要請があっても紹介できないこともあるためだ。担当者は「本当は医療通訳を養成すれば良いのだが、問題はどこが費用負担するかということ」と話した。

 一方、福岡県と福岡市は今年4月、民間企業に業務委託している「福岡アジア医療サポートセンター」で、外国人と医師を電話で結んで14言語を通訳するコールセンターが365日24時間対応するようにした。医療機関への医療通訳派遣は従来の英語と中国語、韓国語に加え、タイ語とベトナム語を年度内に追加する。

 同センターによると、約50人が登録する医療通訳の派遣は15年の約120回から16年は約150回に増えた。しかし、先進県と比較すると、物足りない。例えば約19万人の外国人(16年12月現在)が住む神奈川県内の民間団体は約180人の医療通訳を登録、16年は約7300回派遣した。

 この団体と神奈川県が中心となり、県医師会や各自治体、医療機関などと協定を結ぶなどして、現在の体制を構築したという。約6万5000人の外国人(同)が住む福岡県も同様の体制を作れば、需要を十数倍は掘り起こせるはずだ。

病院が独自に

 医療機関が独自に体制を構築した例も、少数ながらある。福岡記念病院(福岡市早良区)は、国際医療担当室長にネパール人のタパ・アルジュンさん(28)を充てた。アルジュンさんは日本語など5か国の言葉に堪能で、「韓国語も勉強中です」と語る。取材に訪ねた日はネパール人留学生の診療同意書や支払い誓約書など、外国人に求める受診手続きを手伝い、日本人医師の診断の際に通訳をしていた。

 同病院には中国人と韓国人看護師が在籍するほか、15年には日本医療教育財団による「外国人患者受入れ医療機関認証制度」の認証も取得。こうした体制が口コミで広がり、同年に125人だった外国人受診者が16年には468人に増えた。

 この認証を九州・沖縄・山口で取得したのは4機関だけだ(表参照)。今年3月に取得した九州大病院(同市東区)の責任者である清水周次教授(61)は「これまでは職員自身が外国人対応は手間がかかるという認識だった。今回を契機に体制を強化したい」と、表情を引き締めた。

NPOが講座開設、医師・看護師が講師に

 政府の新成長戦略を受け、日本の医療機関での受診を希望する海外居住の外国人を受け入れる「医療滞在ビザ」が制定されたのが2011年。しかし、外国人の生活全般を支援するNPO法人「グローバルライフサポートセンター」(福岡市博多区)の山下ゆかり代表理事(54)は、「福岡の医療機関は在日外国人の受け入れ体制すら構築できていない」と訴える。

 その打開策として、同センターは日本医療教育財団による医療通訳技能認定試験に向けた講座を7月22日、同市内で始める。試験は基礎と専門の2コース。基礎を受験するには同財団が指定する団体が実施する講座履修か、1年以上の実務経験などが条件で、同センターは九州初の指定を受けた。

 講座には海外経験のある福岡赤十字病院(同市南区)の医師や看護師も講師として協力する。同センターは14年、医療滞在ビザの身元保証機関にも登録している。

YOMIURI ONLIN 2017/07/11

112回の閲覧

最新記事

すべて表示

西日本支社オープン

みなさまのお近くに、ライフアシスト西日本支社を開設いたしました 今後とも、よろしくお願いいたします ライフアシスト西日本支社 〒700-0976 岡山県 岡山市北区辰巳37-122 1F TEL 0120-966-769