“ソニーの介護”が追求する「気付きの品質管理」

ソニー・ライフケア 代表取締役社長の出井学氏は、「デジタルヘルスDAYS 2017」(主催:日経BP社、協力:日経デジタルヘルス)の2日目のカンファレンスに登壇。同社が介護事業へ参入した経緯と理念について講演した。

 

ソニーグループにはソニー生命という生命保険事業がある。コンサルティング型の販売を行っているため、顧客のニーズを聞く機会が多い。最近は高齢化に伴い「良い医者を探している」「良い老人ホームを探している」といった相談が増えていたという。

 

 こうした顧客の声を受け、また成長戦略の観点から、介護事業の立ち上げにつながった。ソニーのイメージとして強い、エレクトロニクス事業から始まった事業ではないと説明した。

 当初は、2013年に「ぴあはーと藤が丘」という全32室の小規模な老人ホームを買収したところからスタートした。ノウハウが全くない状態からのスタートだったため、数十の老人ホームを見学し、多くを学べる施設をパートナーとしてぴあはーと藤が丘を選んだという。

 

その後、2016年に自社ブランド「ソナーレ」を立ち上げた。現在までに2カ所(世田谷・浦和)で介護付き有料老人ホームを開業しており、全130室ほどの規模になる。

 介護事業を始めるに当たって作成した事業コンセプトは「Life Focus」。一人ひとりがしっかりと人生を生きるために何が必要かということを追求した。そこで、介護プランを作るケアマネジャーに加え、ホームでの生活、ライフプランを作るライフマネージャーという役職を設けた。入居者の希望に沿うケアができるよう、入居者の視点を大切にするためだ。

 

 同社が重視している指標の一つに「入院率」がある。入居者数と入居日数の積を分母に、入院者数と入院日数の積を分子にした数値で、入居者がどれだけ入院しているかを示す。高齢者が入院すると、退院後の身体機能が大幅に低下することが多い。入院率を下げるため、同社は「気付きの品質管理」を行っている。全職員がタブレット端末を持ち、「MICS」と呼ぶシステムで入力した情報を集約、管理する。職員間の情報共有を徹底し、適切なケアをすることで入院を予防できるとする。

 

 その結果、ぴあはーと藤が丘は買収前も含めた16年間の実績で入院率1.88%と低い水準を維持している。出井氏はこれを「気付きの品質」を高めた結果だと位置付ける。その後、自社ブランドとして立ち上げた「ソナーレ祖師ヶ谷大蔵」では、最初の9カ月で入院率を1.05%に抑えられたという。

 

あらゆる角度から睡眠を管理

 

 ソニー・ライフケアの施設で実施している「スリープマネージメント」の取り組みもユニークだ。生活を豊かにするには生活リズムを作ることが重要だという考えのもと、夜に質の高い眠りを得られるように工夫をしている。マットレスを個人に合わせてカスタマイズしているほか、レクリエーションの時間を夕方に設け、うたた寝を防止している。その時間帯に寝てしまうと夜に寝付きが悪くなり、睡眠の質が落ちてしまうためだ。それでもよく眠れない人には睡眠センサーも導入して指導しているという。

 

 内装や部屋の構造もコンセプトを踏まえた設計になっている。例として、ベッドを縦横どちらの向きにも置けるように18m2の部屋は間口3.4mを基準にした。これにより車椅子やリフトなどを持ち込んでも問題なく利用できるようになった。PP(プライベート・パブリック)分離にも配慮している。老人ホームで一般的な引き戸は床や天井との間に隙間があり、室内にいても外の音が聞こえてしまう。プライベートな時間を守るため、25dBの遮音効果のある扉を設置した。

 

 出井氏が講演で繰り返し語ったのは「品質」だ。「一棟一棟ていねいに品質を作っていくことが、ひいては利用者の期待に添える形になる」(同氏)。今後の展開としては、年間何棟といった目標は掲げず、数年の間は多くても年数棟のペースで拡大していくという。

 出井氏は、「老人ホームに入る際、自宅からの転居、家族からの独居、新たな集団生活、という3つの苦渋の選択がある」と語る。多くの場合、老人ホームに入れる側にも罪の意識があり、入る側も入りたくないという思いがあるという。こうした中、同社が目指すのは、「『あのホームに住みたい』と言われる」(同氏)ような施設だと強調した。

 

日経デジタルヘルス

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